韓国丸亀製麺コピー店、また衣替え 課題も
https://www.news24.jp/articles/2021/09/07/10936204.html日テレNews 2021年9月7日
丸亀製麺跡地で従業員や備品もそのままに居抜きコピー営業
韓国丸亀製麺コピー店、また衣替え
先月、韓国から事業撤退したうどんチェーン「丸亀製麺」の店舗を使って無関係のうどん店が看板だけ変えて“コピー営業”していた問題で、店側が、7日までに店名をさらに変更したことがわかりました。当時のメニュー流用などは是正されましたが、製造方法などはコピーされたままとみられ、日本企業が海外事業から撤退する際の課題も見えてきました。
■突然の韓国撤退 コロナ禍で日本企業も苦境に
運営元のトリドールホールディングスに取材をすると、韓国事業からの撤退は8月15日付とのこと。2019年7月以降、韓国で起きた日本製品の不買運動にともない売り上げが一時減少したものの、その後、回復。しかし、コロナ禍で、韓国では飲食店の営業制限が長引き、売り上げの回復の見通しが立たないことなどが理由でした。韓国では、最大12店舗を構えたものの、撤退時点では3店舗にまで減らしていました。
8月25日、このことを報じると日本でも大きな話題になりました。背景や状況などをさらに調べる必要があると考え、翌日、店舗があった場所へ確認に向かうと意外なことが起きていました。
■丸亀製麺跡地で居抜きコピー営業していた「自家製麺 丸」
まず向かったのは、観光客にもなじみの深いソウルの繁華街、明洞(ミョンドン)。私自身も何度か利用したことがあった丸亀製麺・明洞店だった場所です。ただ、閉店したはずの店は営業を続けていて、多くのお客さんが出入りしています。店構えは、どう見ても「丸亀製麺」当時のまま。メニュー、のぼり旗などはそのまま使われ、店の雰囲気もほぼ同じ状態です。ただ、看板だけが「自家製麺 丸」に変わっていました。
そのときは、「別の経営者が正式に事業譲渡されたのだろう」と考えていました。ただ、あまりに酷似した状態で運営されていることに違和感を覚え、念のためトリドールホールディングスに確認をすると――
「今、営業されている店は、弊社として容認したものではありません。現在のオーナーは、弊社とは無関係です」(トリドール広報)
なんと、本家が認めない形での“居抜きコピー営業”だったのです。利用した人によりますと、内装ののれんや、お皿などは「丸亀製麺」のロゴ入りのものが使われていたということです。これは、きちんと是正させなければと考え、カメラで取材を行い、問題を報じることにしました。
店頭の撮影を始めると、すぐに店員が気づいて様子を見ています。しばらくすると今のオーナーだと名乗る若い男性が出てきて、奇妙な釈明を始めました。
「この店は、丸亀製麺とはまったく違うものだ。私が日本に旅行したとき見てやったもので、同じだと言われて、私も今、相当に被害を受けている」(現オーナー)
こうした説明は、我々が色々と尋ねるまでもなく、オーナー自らが話し始めました。また、明らかに動揺していたことを踏まえると、“いけないことをやっている”という自覚はあったようです。
■別の店舗跡も「自家製麺 丸」に
さらに、驚くべきことに、同じようなことがソウルの別の繁華街、弘大(ホンデ)の丸亀製麺の店があった場所でも起きていました。こちらも、看板は「自家製麺 丸」に変わっていますが、店構えや内装は、ほとんど変わらず。丸亀製麺が最後まで営業していた3店舗のうち、少なくとも2店舗が“居抜きコピー”されていたことになります。
店頭には、こんな貼り紙で案内が出ていました。
「『自家製麺 丸』として新たに出発をしました。」「ノウハウそのままに、変わらない味とより良いサービスでお客様に応えます」
正式に事業を受け継いだかのように誤解させるに十分な内容です。実際に、店から出てきたお客さんに話を聞くと――
「頻繁に来ているけど、店名が変わったことにも気づかなかった。」「味は同じだから、利用者としては問題ない。」(利用客)
多くの人が、“コピー店”と認識しないまま利用していました。別のお客さんはこちらが事情を説明すると、ようやく理解し「道理に合わないような営業するのは適切ではない」と話していました。そして、8月27日、我々がこの問題を報じると、店側はさらなる動きにでました。
■再びの看板変更 メニュー流用などは是正
9月7日、再度、状況を確認に行くと、2店舗ともにまた名前が変わっていました。明洞店だった場所は、「商内(あきない)製麺」に、弘大(ホンデ)店だった場所は、「ホンデ製麺所」という名前に変更されていたのです。
“コピー営業”だと報じられ「自家製麺 丸」のイメージが傷ついたため、さらに別の屋号にして“リセット”し再スタートしたようです。
明洞店があった場所については、丸亀製麺当時のまま流用されていたのぼり旗やメニュー表は撤去。また、お皿なども無地のものに変更され、トリドール側が求めていた「誤解を避ける店作り」では一定の是正を行ったようです。
■日本企業の海外撤退 浮かび上がる課題も
ただ、しばらく店内の様子や店員の動きを見ていて、あることに気づきました。製麺機や、麺をゆでる機材などは、使い古してあり、おそらく丸亀製麺当時のまま。店員の動きにも、まったく無駄がなく、丸亀製麺当時のスタッフが少なからず、そのまま働いているのではないかと考えられます。
店から出てきた客が、口々に「味が変わっていない」と言っていた理由は、製法なども“忠実にコピー”されていることによる可能性があります。手際よくゆでられ、提供されていくうどん。それを見ながら、戦場で敵の武器などを獲得する「鹵獲(ろかく)」という言葉を思い浮かべずにはいられませんでした。
飲食業、製造業、小売業など問わず蓄積された“ノウハウ”は、日本企業が海外で闘う上で大きな武器になるはずです。今回の一連の取材を通じて、海外での事業展開から撤退するとき、こうしたノウハウをいかに守るかも日本企業に求められる重要な戦略だと改めて感じます。
韓国丸亀製麺コピー店、また衣替え 課題も
https://www.news24.jp/articles/2021/09/07/10936204.html日テレNews 2021年9月7日
丸亀製麺跡地で従業員や備品もそのままに居抜きコピー営業
韓国丸亀製麺コピー店、また衣替え
先月、韓国から事業撤退したうどんチェーン「丸亀製麺」の店舗を使って無関係のうどん店が看板だけ変えて“コピー営業”していた問題で、店側が、7日までに店名をさらに変更したことがわかりました。当時のメニュー流用などは是正されましたが、製造方法などはコピーされたままとみられ、日本企業が海外事業から撤退する際の課題も見えてきました。
■突然の韓国撤退 コロナ禍で日本企業も苦境に
運営元のトリドールホールディングスに取材をすると、韓国事業からの撤退は8月15日付とのこと。2019年7月以降、韓国で起きた日本製品の不買運動にともない売り上げが一時減少したものの、その後、回復。しかし、コロナ禍で、韓国では飲食店の営業制限が長引き、売り上げの回復の見通しが立たないことなどが理由でした。韓国では、最大12店舗を構えたものの、撤退時点では3店舗にまで減らしていました。
8月25日、このことを報じると日本でも大きな話題になりました。背景や状況などをさらに調べる必要があると考え、翌日、店舗があった場所へ確認に向かうと意外なことが起きていました。
■丸亀製麺跡地で居抜きコピー営業していた「自家製麺 丸」
まず向かったのは、観光客にもなじみの深いソウルの繁華街、明洞(ミョンドン)。私自身も何度か利用したことがあった丸亀製麺・明洞店だった場所です。ただ、閉店したはずの店は営業を続けていて、多くのお客さんが出入りしています。店構えは、どう見ても「丸亀製麺」当時のまま。メニュー、のぼり旗などはそのまま使われ、店の雰囲気もほぼ同じ状態です。ただ、看板だけが「自家製麺 丸」に変わっていました。
そのときは、「別の経営者が正式に事業譲渡されたのだろう」と考えていました。ただ、あまりに酷似した状態で運営されていることに違和感を覚え、念のためトリドールホールディングスに確認をすると――
「今、営業されている店は、弊社として容認したものではありません。現在のオーナーは、弊社とは無関係です」(トリドール広報)
なんと、本家が認めない形での“居抜きコピー営業”だったのです。利用した人によりますと、内装ののれんや、お皿などは「丸亀製麺」のロゴ入りのものが使われていたということです。これは、きちんと是正させなければと考え、カメラで取材を行い、問題を報じることにしました。
店頭の撮影を始めると、すぐに店員が気づいて様子を見ています。しばらくすると今のオーナーだと名乗る若い男性が出てきて、奇妙な釈明を始めました。
「この店は、丸亀製麺とはまったく違うものだ。私が日本に旅行したとき見てやったもので、同じだと言われて、私も今、相当に被害を受けている」(現オーナー)
こうした説明は、我々が色々と尋ねるまでもなく、オーナー自らが話し始めました。また、明らかに動揺していたことを踏まえると、“いけないことをやっている”という自覚はあったようです。
■別の店舗跡も「自家製麺 丸」に
さらに、驚くべきことに、同じようなことがソウルの別の繁華街、弘大(ホンデ)の丸亀製麺の店があった場所でも起きていました。こちらも、看板は「自家製麺 丸」に変わっていますが、店構えや内装は、ほとんど変わらず。丸亀製麺が最後まで営業していた3店舗のうち、少なくとも2店舗が“居抜きコピー”されていたことになります。
店頭には、こんな貼り紙で案内が出ていました。
「『自家製麺 丸』として新たに出発をしました。」「ノウハウそのままに、変わらない味とより良いサービスでお客様に応えます」
正式に事業を受け継いだかのように誤解させるに十分な内容です。実際に、店から出てきたお客さんに話を聞くと――
「頻繁に来ているけど、店名が変わったことにも気づかなかった。」「味は同じだから、利用者としては問題ない。」(利用客)
多くの人が、“コピー店”と認識しないまま利用していました。別のお客さんはこちらが事情を説明すると、ようやく理解し「道理に合わないような営業するのは適切ではない」と話していました。そして、8月27日、我々がこの問題を報じると、店側はさらなる動きにでました。
■再びの看板変更 メニュー流用などは是正
9月7日、再度、状況を確認に行くと、2店舗ともにまた名前が変わっていました。明洞店だった場所は、「商内(あきない)製麺」に、弘大(ホンデ)店だった場所は、「ホンデ製麺所」という名前に変更されていたのです。
“コピー営業”だと報じられ「自家製麺 丸」のイメージが傷ついたため、さらに別の屋号にして“リセット”し再スタートしたようです。
明洞店があった場所については、丸亀製麺当時のまま流用されていたのぼり旗やメニュー表は撤去。また、お皿なども無地のものに変更され、トリドール側が求めていた「誤解を避ける店作り」では一定の是正を行ったようです。
■日本企業の海外撤退 浮かび上がる課題も
ただ、しばらく店内の様子や店員の動きを見ていて、あることに気づきました。製麺機や、麺をゆでる機材などは、使い古してあり、おそらく丸亀製麺当時のまま。店員の動きにも、まったく無駄がなく、丸亀製麺当時のスタッフが少なからず、そのまま働いているのではないかと考えられます。
店から出てきた客が、口々に「味が変わっていない」と言っていた理由は、製法なども“忠実にコピー”されていることによる可能性があります。手際よくゆでられ、提供されていくうどん。それを見ながら、戦場で敵の武器などを獲得する「鹵獲(ろかく)」という言葉を思い浮かべずにはいられませんでした。
飲食業、製造業、小売業など問わず蓄積された“ノウハウ”は、日本企業が海外で闘う上で大きな武器になるはずです。今回の一連の取材を通じて、海外での事業展開から撤退するとき、こうしたノウハウをいかに守るかも日本企業に求められる重要な戦略だと改めて感じます。
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